不動産を相続放棄したいときの流れ
不動産の相続放棄をしたい場合は、家庭裁判所に必要書類を揃えて手続きを行う必要があります。ここでは、不動産を相続放棄したいときの手続きの具体的な流れや期限・期間、および相続放棄を行う際の注意点について説明します。

不動産の相続放棄とは
不動産の相続放棄とは、相続人として不動産を相続する権利を放棄することです。相続財産には、土地や建物などの不動産、預貯金などのプラスの財産のほか、借金や保証債務といったマイナスの財産も含まれます。
不動産の相続放棄をしたい場合は、期限内に家庭裁判所で必要な手続きを行わなければなりません。また、一度相続放棄の手続きをすると取り消しができないため、慎重に判断し、適切な手続きの流れに沿って進める必要があります。
不動産の相続放棄の流れとは
- 遺言書の有無や内容の確認
- 相続財産の調査および法定相続人の確定
- 必要書類を揃えて相続放棄申述書を作成、提出
- 相続放棄申述受理通知書の受領
不動産の相続放棄をしたいときの流れは次のとおりです。
1.遺言書の有無や内容の確認
遺言書がある場合はその内容に沿った相続が必要です。また、関係者全員が同意すれば、遺言書がない場合と同様に、相続人全員で遺産分割協議書に基づいて相続財産の分割をすることになります。
2.相続財産の調査および
法定相続人の確定
相続財産には、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も含まれるため、財産の全容を調査、把握しなければなりません。調査が終了したら、相続する権利がある法定相続人を確定します。
なお、相続放棄の申述書に添付する書類には、相続人を証明するための戸籍謄本などが必要となります。
3.必要書類を揃えて
相続放棄申述書を作成、提出
被相続人の生前のすべての戸籍・除籍、相続人の戸籍など、必要書類を揃え、相続放棄申述書を作成して、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出します。
申述書は、家庭裁判所の窓口のほか、ホームページからのダウンロードで入手することが可能です。また、提出には、家庭裁判所窓口への持ち込み、または郵送による方法があります。
4.相続放棄申述受理通知書の受領
家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書の受領をもって、相続放棄が認められたことになります。なお、申述内容に懐疑がある場合は、照会書が届くことがあるため、すぐに回答して返信しましょう。さらに、追加書類や資料を求められる場合もあります。
相続放棄の提出期限や
審査・受理までの期間
相続放棄には期限があり、熟慮期間を配慮して被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内に手続きを行わなければ相続放棄ができなくなります。また、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出してからの審査や受理にかかる期間は、およそ7日~10日間です。
不動産の相続放棄を
行う際の注意点
不動産の相続放棄を行う際の主な注意点は次の3つです。
- 手続き完了まで相続財産に触れてはならない
- 相続放棄をした相続人の子どもは代襲相続できない
- 相続放棄をしても死亡保険金や遺族年金は受領できる
相続放棄の手続き完了まで
相続財産に触れてはならない
相続放棄の手続きが終わるまでは、勝手に相続財産に触れないようにしましょう。万が一、以下のような行為を行うと単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるので注意が必要です。
- 被相続人宛の請求書に被相続人の財産から支払う。
- 被相続人の生前の入院費や介護費用などを被相続人の口座から支払う。
- 被相続人が居住していたアパートの解約、滞納していた家賃を支払う。
- 被相続人の家を売却、家財をもらうなど、被相続人の所有物を自分のものにする。
- 被相続人の財産を隠匿する。
相続放棄をした相続人の子どもは
代襲相続できない
本来、遺産を相続する相続人が被相続人よりも前に亡くなっている場合、その子どもなどが相続人になることを代襲相続といいます。
相続放棄を行うと、はじめから相続人ではなかったとみなされるため、相続放棄をした相続人に子どもがいても代襲相続することはできません。
相続放棄をしても死亡保険金や
遺族年金は受領できる
相続放棄をした場合、不動産や預貯金などを相続することはできなくなりますが、死亡保険金や遺族年金を受け取ることはできます。
なぜなら、死亡保険金は保険金受取人の固有の財産とみなされ、相続財産に含まれないからです。また、遺族年金も遺族がその固有の権利に基づいて受給するものであるため、こちらも相続財産に含まれません。
まとめ:
不動産の相続放棄の判断は
慎重に、適切な手続きを
不動産の相続放棄をする場合、家庭裁判所での手続きが必要で、申請期限は「相続を知った日から3ヶ月以内」 と決められています。相続放棄をすると、不動産だけでなく、預貯金などのプラスの財産も放棄することになるため、慎重に判断することが重要です。
また、手続きが完了するまでは、被相続人の財産を勝手に処分すると相続を認めたと判断される可能性があるため注意が必要です。一方で、相続放棄をしても死亡保険金や遺族年金は受け取ることができます。
相続放棄は一度手続きすると取り消しができないため、不動産の売却や活用の選択肢も考えた上で、適切な方法を選ぶことが大切です。