相続人全員が相続放棄した不動産はどうなる?
相続する土地などにメリットが感じられない場合、相続人全員が不動産を相続放棄する可能性があります。ここでは、相続人全員に相続放棄された不動産の処理の方法や注意すべき点などについて説明します。

不動産相続拒否は連鎖する?
メリットが感じられない不動産の相続は、相続人全員へと相続拒否が連鎖することがあります。
故人が財産を残している場合、被相続人の配偶者は常に相続人になるため、子どもが相続放棄をした場合、配偶者および被相続人の直系尊属(父母や祖父母)に財産の相続権が引き継がれます。
また、被相続人の直系尊属も相続放棄した場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹へ引き継がれ、その後も次々と相続権が引き継がれることに。
しかし、相続拒否が連鎖すれば、どこまで辿っても相続人が決定できなくなります。
相続人全員が相続放棄するとどうなる?
不動産の相続権を有する関係者全員が相続放棄した場合、民法第951条の規定により、相続財産は法人化されます。その後、相続財産管理人の選任の手続きを経て、家庭裁判所により相続財産管理人が選任されることに。
そして、この相続財産管理人によって債権者および受遺者への弁済が実施されることとなります。
それでも財産が残る場合は、最終的に国庫に引き継がれることになりますが、それまでの流れは容易なものではありません。
相続財産管理人の選任が必要
相続放棄した不動産の管理義務から逃れるには、相続財産管理人の選任が必要になります。最終的に国に帰属することになるにせよ、相続人一同が相続財産管理人選任の申し立てを行い、相続財産管理人が所定の手続きを行わなければなりません。
相続財産管理人の選任方法と費用
相続財産管理人は、家庭裁判所に申し立てを行って選任してもらいます。その際、利害関係人が申立人となり、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てを行いますが、選任にかかわる費用は次の通りです。
必要な費用
- 申し立て手数料:800円(非課税)※収入印紙
- 連絡用郵便切手:数百円~※家庭裁判所によって異なる。
- 官報公告料:4,230円(非課税)
- 予納金:事案により50万円~100万円程度(非課税)
相続財産の状況にもよりますが、ほとんどの場合、相続財産を処分するための費用、財産管理人の報酬に充てるため、高額な予納金が発生します。また、相続財産管理人には、ほとんどの場合司法書士や弁護士などの専門家が選任されることになるため、毎月1万円~5万円程度の報酬も必要です。
相続財産管理人選任後の
不動産の処理方法
相続財産管理人は、相続財産法人の法定代理人として相続財産の管理を行いますが、相続財産を清算して国庫に帰属させるのが主な仕事です。ちなみに、相続財産管理人の主な業務は以下の通りです。
- 相続人の有無の調査
- 債権者への弁済/受遺者への支払い
- 必要な際は相続財産を現金化
- 清算後に残った財産を国庫へ帰属
相続放棄の代案なら売却
相続人全員が相続放棄した不動産は、相続財産管理人を選任することで、管理から逃れることはできますが、そのためには高額な費用が必要です。一方で、相続しても管理が面倒、メリットがないといった不動産は、相続放棄のほかに売却という方法もあります。
相続人には不要な不動産でも必要としている人が現れる可能性は少なくありません。まずは、無料査定で相場を確認し、その後専門業者に買取を相談してみましょう。
まとめ:不動産の相続拒否が連鎖するリスクと対処法
不動産の相続放棄は、相続権が次の親族に引き継がれるため、相続人全員が放棄すると連鎖的に続くことになります。最終的に相続人がいなくなると、相続財産管理人が選任され、財産の整理が行われた後に国庫に帰属します。
しかし、相続財産管理人の選任には高額な費用(50万~100万円以上)がかかるため、簡単に処理できるものではありません。不要な不動産であっても、売却という選択肢を検討することが重要です。相続放棄を決める前に、まずは専門業者に査定を依頼し、買取の可能性を確認してみると良いでしょう。