相続土地国庫帰属制度
相続した土地の使い道がなく、手放したいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。そんなときに検討できる方法が「相続放棄」と「相続土地国庫帰属制度」です。相続土地国庫帰属制度は令和5年に始まった新しい制度で、どちらを選ぶかによって費用やリスクが大きく変わってきます。
まず確認!「相続放棄」と「国庫帰属制度」の決定的な違い
相続放棄とは?
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も含め、すべての相続財産を受け取らないことを裁判所に申し出る手続きです。
注意したいのは、相続放棄をしても不動産が自動的に国のものになるわけではないという点です。不要な不動産を処分するには、別途「相続財産管理人」を選任する必要があり、そのための予納金などの費用もかかります。
また、相続放棄ではすべての財産を手放すことになるため、預貯金など他に相続したい財産があっても一緒に放棄しなければなりません。これが相続放棄の大きなデメリットです。
相続土地国庫帰属制度とは?
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で取得した土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。
この制度の最大のメリットは、土地だけを手放せることです。預貯金や有価証券などの他の財産は、そのまま相続することができます。
ただし、すべての土地が対象になるわけではありません。建物が建っている土地、抵当権などの担保がついている土地、境界が不明確な土地などは対象外です。また、審査手数料に加えて、10年分相当の管理費を負担金として支払う必要がある点もデメリットといえます。
「相続放棄」と「国庫帰属制度」で比較!
相続放棄と相続土地国庫帰属制度では、費用、手続きにかかる時間、手放せる財産の範囲がまったく異なります。自分の状況に合った方法を選ぶために、それぞれの特徴を見ていきましょう。
相続放棄に向いてる人
相続放棄を選ぶべきなのは、相続財産全体で見たときに借金などのマイナスが多く、負債超過になっている場合です。
相続放棄をすれば、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄できるため、後から借金が発覚するといったリスクもまとめて回避できます。もとより、預貯金や不動産などのプラスの財産がそもそもなく、「全部いらない」と判断が明確な方にも適しています。
ただし、不要な不動産を確実に処分するには、相続財産管理人の選任費用や予納金といった高額なコストがかかります。そうした費用負担を覚悟できるのであれば、相続放棄を経由して国庫に帰属させるルートも検討できるでしょう。
国庫帰属制度が向いている人
相続土地国庫帰属制度が向いているのは、「土地だけは手放したいが、預貯金や有価証券などは相続したい」という方です。
この制度なら、負担になる土地だけを国に引き取ってもらい、プラスの財産は手元に残すことができます。
ただし、どんな土地でも対象になるわけではありません。建物が建っていないこと、抵当権などの担保がついていないこと、隣地との境界が図面や測量で明確になっていることなどが条件です。比較的整理された状態の土地で、かつ、これらの要件を満たせる方に向いています。
また、審査手数料に加えて10年分相当の管理費を負担金として支払う必要があります。一定の費用負担を受け入れてでも確実に国に引き取ってもらいたい、という方に適した選択肢といえるでしょう。
相続土地国庫帰属制度の利用条件と手続き
申請できる土地・できない土地の厳格な要件
相続土地国庫帰属制度では、申請できる土地の要件が厳しく定められています。
まず、申請できないのは以下のような土地です。
- 建物が建っている土地
- 抵当権などの担保権がついている土地
- 隣地との境界が不明確な土地
- 崖地や山林など、管理・保全に手間や費用が大きくかかる土地
申請は法務局への申し出から始まり、書類審査と現地調査を経て、最終的に法務大臣が承認を判断します。
費用の実態:負担金と審査費用
相続土地国庫帰属制度を利用する際には、「審査手数料」と「負担金」の2種類の費用が必要です。
まず、申請時に土地一筆ごとの審査手数料を印紙代として納めます。申請が承認されたら、国が10年間その土地を管理するための費用として負担金を支払います。
負担金の目安は、宅地の場合で20万円前後からとされていますが、地目や面積によっては数十万円になることもあります。費用面も考慮して、相続放棄や売却など他の選択肢とも比較検討することが大切です。
相続放棄で国庫帰属を目指す場合のコストとリスク
相続放棄をした後に不要な土地を国庫に帰属させるには、家庭裁判所で相続財産管理人を選任してもらう必要があります。
その際の予納金は、一般的に20万円から100万円程度といわれています。これに申立費用や専門家への報酬も加わるため、土地の評価額が低い場合は「費用倒れ」になるリスクがあります。
また、相続財産管理人が財産調査、債権者への公告、換価処分などを行うため、すべての手続きが終わるまでに長い時間がかかる可能性があります。時間とコストの両面から、慎重に判断する必要があるでしょう。
相続土地国庫帰属制度の最大のハードル
相続土地国庫帰属制度を利用する際に最も気をつけたいのが、「不承認になった場合」です。
不承認になっても、支払った審査手数料は返還されません。また、建物や権利関係、管理負担などの問題があることが明らかになるため、その後に市場で売却しようとしても難しくなる可能性があります。
これらのリスクを減らすには、申請前の準備が重要です。具体的には、隣地所有者と協議して境界を明確にしておく、建物を解体しておく、担保権や賃借権などの権利関係を整理しておくといった対応です。事前にしっかり準備しておけば要件を満たす可能性が高まり、不承認のリスクを抑えられるかもしれません。
不動産だけが要らないなら「売却」がおすすめ
なぜ「国庫帰属」よりも「売却」が有利なのか
国庫帰属制度は不要な土地を国に引き取ってもらえる制度ですが、既述のとおり、審査手数料や負担金などまとまった費用がかかります。しかも、不承認になっても支払ったお金は戻ってきません。
一方、売却なら費用を支払うどころか、買取価格として現金が手元に入ります。建物が残っている土地や境界が不明確な土地でも、訳あり物件を専門に扱う業者であれば買取可能なケースが多くあります。売却してしまえば、管理責任や固定資産税などの負担からも、より早く解放される可能性が高まるでしょう。
売れない不動産を確実に売却する専門業者の選び方
売却が難しいと感じる不動産を手放したい場合、「どんな物件をどこまで買い取っているか」を確認して業者を選ぶことが重要です。
再建築不可、借地権付き、事故物件、狭小地など、一般の不動産会社が扱いにくい物件でも、専門業者なら積極的に買い取ってくれるケースが少なくありません。国庫帰属制度の対象外となる土地や建物付き物件でも相談可能です。
業者を選ぶ際のチェックポイントは以下の通りです。
- 買取実績を公開しているか
- 査定から契約・入金までのスピードはどうか
- 解体や登記の手配までワンストップで対応しているか
最低でもこれら3点を確認し、信頼できる業者かどうかを見極めましょう。
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解説を担当するのは、東京で45年以上にわたり買取事業を中心とした不動産業を営む翔栄代表の原田氏。一般的な不動産会社では扱いにくい建物付き物件や利用しづらい土地でも、自社活用(民泊など)のノウハウを活かして買取できるため、高額査定につながるケースも多く見られています。
「国庫帰属制度を使うべきか、売却で整理すべきか」といった判断や税務面についても、弁護士・税理士と連携したワンストップ対応が可能です。最短0日決済と買取保証制度を通じ、翔栄では納得できる出口を用意しています。
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原田 芳史 氏