相続放棄をしても固定資産税の支払い義務が生じる
不動産を相続した場合、相続人は固定資産税を納税する義務が生じますが、相続放棄をしたにも関わらず固定資産税を納税するよう通知が届くこともあります。当記事では、不動産の相続放棄と固定資産税の関係を整理するとともに、注意しておきたいポイントを詳しく解説します。
固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や家屋などの不動産を所有している場合に課される地方税の一種です。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者とされ、市区町村が管理する「固定資産課税台帳」に基づいて課税されます。
税額は固定資産評価額に標準税率1.4%を乗じて算出され、自治体の重要な財源として道路や公共施設の整備などに使われます。なお、課税対象は不動産を「所有している」とみなされる状態にあることで判断されるので、相続や名義変更の有無が納税義務の有無に影響することもあります。
相続放棄した場合の固定資産税は支払うのか?
財産も負債も一切引き継がないことが相続放棄の基本
相続を放棄すると、被相続人の財産や負債、公租公課などを含め、すべての権利義務を受け継がないことが原則です。相続放棄が家庭裁判所で正式に受理された時点で、不動産に課される固定資産税の納税義務も発生しません。相続放棄が認められれば、資産も負債も一切引き継がないことが民法の基本的な考え方です。
手続き時期によっては固定資産税の請求が届くこともある
固定資産税は、「台帳課税主義」という仕組みに基づいています。所有者として台帳に登録されている人が課税対象になります。
そのため相続放棄の手続きタイミングによっては、放棄しているにも関わらず納税義務が発生することがあります。特に、放棄の手続きが完了する前に自治体が課税対象者を確定している場合、形式上は相続人として扱われることなります。
1月1日時点の台帳登録が納税義務を決める仕組み
「台帳課税主義」とは、毎年1月1日(賦課期日)時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人、またはその不動産を現に所有している人に課税する考え方のことです。この考え方に基づいた場合、名義変更が行われていない場合や相続放棄の手続き中であっても、形式上の登録情報をもとに固定資産税が課税されることもあります。そのため、所有の意思がなくても請求書が届くケースが実際に発生します。
相続放棄しても納税義務が残るケース
相続放棄を申し立てた場合でも、手続きの完了時期によっては一時的に納税義務が残る場合があります。
上記のとおり、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者情報を基準に課税されるので、その時点で放棄がまだ受理されていない場合、登記や課税台帳上では相続人として扱われてしまいます。実際には相続を放棄していても、自治体から固定資産税の通知や請求書が届くのはこの仕組みによるもので、納税義務の有無が確定するまでに時間差が生じることもあります。
手続きの進行状況を自治体に説明し、誤って納税義務を負わないよう早めに確認・対応することが重要です。
相続放棄したのに固定資産税の請求がきた場合の対処法
立て替えて本来の納税者に請求する
相続放棄の手続きが完了しているにもかかわらず、固定資産税の請求書が届いた場合は、まず支払いの要否を確認することが大切です。納期限が迫っている場合は、延滞金や差押えを防ぐために、支払って、後で返還請求をおこなう選択もあります。
この場合には、実際の所有者や相続財産管理人など本来の納税義務者が確定した段階で、立て替えた分を求償する形で返還請求をおこないます。返還請求に備え、固定資産税の支払い後は領収書や請求書の控えを保管しておきましょう。
市役所に不服申し立てを行う
納付書の内容に納得できない場合や、相続放棄済みにもかかわらず課税されている場合は、市区町村に対して不服申し立てを行うことができます。具体的には、納税通知書を受け取った日から3か月以内に「審査請求」を提出し、課税の妥当性を見直してもらう手続きです。
不服申し立てを行う場合には、家庭裁判所の相続放棄受理証明書や登記簿謄本など、放棄が法的に成立していることを示す書類の添付が必要です。手続きをすれば、誤った課税が修正される可能性もあります。
固定資産税の納税通知書を放置しない
固定資産税の納税通知書を放置すると、相続放棄の手続き中であっても思わぬトラブルに発展する恐れがあるのでご注意ください。
自治体は納期限を過ぎた事案に対して督促や催告を行い、これに納税者が応じない場合には、財産の差押えなど、強制徴収の手続きに移行することがあります。また、支払いの遅延期間に応じて延滞金が加算され、放置期間が長引くほど負担額が増えていくので注意が必要です。
相続放棄がすでに成立している場合でも、課税台帳上で相続人として登録されている間は請求が続くケースもあります。納税通知書を受け取ったら放置せず、早めに自治体へ事情を説明し、不要な延滞金や法的措置を避けるよう行動しましょう。
相続放棄できないケース
相続財産から固定資産税を支払う
被相続人の口座や財産から固定資産税を支払ってしまうと、法律上「相続財産を処分した」と見なされる可能性があります。民法921条では、相続財産の処分を行った場合には「単純承認」とみなすと定められているので、もし被相続人の財産に手をつければ、相続放棄が認められなくなるおそれがある点にご注意ください。
相続放棄を検討している段階では、被相続人名義の資金や資産を一切移動させないことが大切です。
不動産の名義変更
相続放棄の手続きが完了する前に、不動産の名義を自分の名義に変更してしまうと、家庭裁判所によって所有権を承継した行為とみなされる可能性が高く、相続を承認したと判断されてしまいます。
相続放棄を希望する場合は、登記などの処理はおこなってはいけません。
相続放棄の申請期間を過ぎてしまう
相続放棄の申請は、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。この期間を過ぎてしまうと、放棄の意思があっても原則として受理されず、すべての財産と負債を相続する「単純承認」とみなされます。
相続人が複数いる場合は、早めに財産や負債の状況を把握し、放棄を検討する際は期限を意識して行動することが大切です。
支払い義務がないのに支払ってしまった場合
相続放棄の手続きが完了し、本来は固定資産税を支払う義務がないにもかかわらず、誤って納付してしまたた場合には、自治体へ還付請求を行うことにより、支払い分の還付を受けられる可能性があります。
還付の対象となるのは、固定資産税の算定ミスや課税対象者の誤登録などにより、固定資産税が過剰に納付されたと認められた場合です。請求の際には、納税通知書や領収書、相続放棄の受理証明書など、誤って支払ったことを示す資料を添付して申請します。
自治体によっては請求期限が定められていることもあるため、誤納に気づいた時点で速やかに相談することが重要です。
まとめ:相続放棄と固定資産税の関係を正しく理解して行動を
相続放棄をしても、手続きの時期や課税台帳の登録状況によっては、一時的に固定資産税が請求されることもあります。放棄後の対応を誤ると、延滞金の発生や不要な納付につながるおそれもあるので、請求を受けた際は落ち着いて状況を整理することが大切です。複雑な判断が必要な場合は、不動産の専門家や税理士に早めに相談し、適切に手続きを進めましょう。
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